必殺技大全集タイトル

 このインタビューは、『ゲームセンターあらしの秘密』(データハウス刊/1,000円)第2章を著者、版元の許諾を得てホームページ用に再編集したものです。無断転載はお断りいたします。
 文中の巻数、ページ数は、小学館てんとう虫コミックス版(全17巻)を元にしています。

| 炎のコマ | 月面宙返り | エレクトリックサンダー | 真空ハリケーン撃ち |
| グレートタイフーン | スーパーノヴァ | スーパーノヴァトリニティ | 水魚のポーズ |
完全必殺技リスト ★作者よりも詳しい必殺技の秘密!

★「炎のコマ」の秘密

    「ゲームセンターあらし」の必殺技で子供たちに一番人気のあったのは「炎のコマ」だろう。なんとなく「もしかしたら、ぼくにもできるかもしれない」という錯覚を起こすレベルの必殺技で、ゲーセンでマネする子供が多かったのも、この技だ。いまだに盛り場のゲーセンで、「炎のコマ〜!」と叫びながらプレイしている若者がいるのも、その影響が大きかったことの証拠だろう。
     この技は、ゲームマシンのレバーに手を叩きつけるようにして、激しく左右に動かすとものだ。そのレバーを往復させる速度は、なんと1秒間に200万回。目にも止まらぬ速さで手のひらをレバーに叩きつけるために、手とレバーとの間に摩擦熱が生じ、炎が燃え上がるのだ。
    「炎のコマ」が誕生したのは「てんとう虫コミックス」版では第2巻になる。(第2巻P211)
     お正月、初もうでに出かけたあらしは、露店のゲーム屋で「ギャラクシーウォーズ」に挑戦。ところが、このゲームは改造されたインチキマシンで、どうしても1万点を突破できない。一緒に出かけた大文字さとるがインチキを見破ると、暴力露天商に叩きのめされてしまう。
     あらしは、相手がインチキマシンでも、なんとか勝ちたいと考えをめぐらす。そのあらしの目の前で、コマの曲芸師が刀の刃の上でコマを回した。コマの回転が衰えてくると、手でコマのヘリを叩き、回転の勢いを取り戻すのだ。
     あらしは、そのコマの曲芸にヒントを得て、コマを手で回す特訓にはげむ。手から血を流しながらの特訓を続け、ついには摩擦熱でコマが炎を噴き上げた。
     再びインチキゲームに挑んだあらしは、コマ回しの特訓で鍛えた手で、レバーを超高速で動かす。すると、ゲームマシンに内蔵されたマイコン(当時は、こう呼ばれていた。現在ならCPUといったほうがいいだろう)の計算処理能力が、あらしのレバー操作に追いつかなくなった。あらしのミサイルは、襲ってくる隕石の群れをすり抜けてワープ。敵のUFOを撃破した。
    「炎のコマ」の手を動かすスピードが、1秒間に200万回となっていたのは、ゲームマシンに内蔵されたCPUの速度と関係あるらしい。つまり、当時(1979年代終わり)のテレビゲームに使われていたCPUは、8ビットのZ80などが中心で、計算処理能力の基礎になるクロックサイクルと呼ばれるCPUのスピードが2メガヘルツ−−つまり200万ヘルツくらいだったのだ。
     CPUは、200万回の電流のオン・オフを繰り返し、それを計算の基礎にしているのだが、あれから10年ちょっとたった今、スーパーファミコンやメガドライブに使われているCPUも16ビットとなり、スピードも格段に向上した。すでに32ビットのゲームマシンも登場しているし、任天堂は、予告通りに実現するかどうかは別にして、64ビットのゲームマシンの開発を発表している。(8ビットでは同時に処理できるデータの数が十進数では、2の8乗の256まで。16ビットでは2の16乗の66、536となる。スピードだけでなく、同時に処理できるデータも増えるから、動きやカラーも複雑にできるのだ)
     こんなにコンピューターが進歩してしまった平成の世の中では、「炎のコマ」がゲームマシンに通用するかどうかは怪しいところだろう。やはり、あらしは80年代初頭までのヒーローなのだ。だが、ちょっと別の角度から、「炎のコマ」が活躍できるかもしれない。それは、最新のパソコンを相手にしたときだ。
     最近のパソコンの心臓部には、パソコンとはいえないような高性能のMPUが使われている。このMPUの弱点が熱なのだ。計算処理をするときに、ヤカンのお湯を沸かせるといわれるほどの高熱を出すのである。このため、小型扇風機のような冷却ファンで冷やしてやらないと、オーバーヒートで動かなくなってしまうことがある。
     あらしの「炎のコマ」も、66メガヘルツという高速のMPUを狂わせることはできないだろうが、炎を起こすほどの摩擦熱が出るのだから、この熱で、MPUをパンクさせることができるかもしれない。街のゲームセンターにある「ストリートファイターII」で試してみよう。もちろん責任は持たないが。
     この「炎のコマ」には「炎のコマ+月面宙返り(ムーンサルト)」「炎のコマ・ダブルアタック」「炎のコマ・ローリングファイア」「肉体・炎のコマ」「炎のコマ・火龍紅撃ち(かりゅうくれないうち)」「炎のコマ・ハリケーン撃ち」「炎のコマ・両手大車輪」「炎のコマ・リング撃ち」などバリエーション技があった。ほとんどが、急場しのぎに、ちょっとしたヒントだけで使えるようになってしまった技だ。

★月面宙返り(ムーンサルト)

    「ゲーセンあらし」には、読み切りマンガとして発表されたときから、「大回転イナズマ返し」「つるぎの舞い」といった必殺技が出てくるが、いずれも1回限りのもの。「月刊コロコロコミック」に正式連載開始となった第3回目の「ウルトラスペシャル・月面宙返り」の巻に登場した「月面宙返り」が、何度も登場するレギュラー必殺技の第1号となった。(第1巻P37〜)
     この回に初登場したのが月影一平太。八本木中学の番長で、あらしの子分たちから、暴力でゲーム代をまきあげる悪いヤツだった。
     あらしは、一平太にコテンパンにのされてしまうが、東京湾で開かれたゲーム大会で一平太と対戦する。このゲーム大会は、東京湾に浮かぶタンカーにスクリーンを張ってスペースインベーダーを投影し、空中に浮かぶ飛行船からゲームをコントロールするというもの。
     だが、飛行船は強風にあおられて不安定になり、うまくインベーダーの砲台をコントロールできなくなってしまう。そこであらしは、ゲームのために特訓していた縄跳びの応用する。空中にジャンプし、からだを回転させると、頭から急降下、重力加速度を加えた力でレバーやボタンを連続アタックするものだ。回転の勢いでレバーに、ひねりを加えることができるため、複雑な操作ができるようになっている。
     強力なジャンプ力を要求され、空中で無理な姿勢をとらないといけないため、疲れると、バランスを崩してしまうのが欠点だ。
     この技にも「月面宙返り二段撃ち」「月面宙返り十段撃ち」「月面宙返り十二段撃ち」「水中月面宙返り・たつまき落とし」「月面宙返り・十字架撃ち」「月面宙返りプラス炎のコマ・ダブルアタック」「月面宙返りプラス・エレクトリックサンダー」「月面宙返り二段ジャンプ」「カエル跳び月面宙返り」などのバリエーション技、組み合わせ技がある。

★「エレクトリックサンダー」は犯罪行為?

     空中にジャンプして、頭のうしろで両手を擦り合わせて摩擦電気を起こし、それをゲームマシンに向けて放電する過激な必殺技が「エレクトリックサンダー」だ。あらしは、人間発電機になってしまうのである。
     この技の初登場は「あらし対一平太 涙の対決」の巻(第5巻P107〜)だった。東日本の番長たちをたばねる総番の一平太は、全日本総番長の座をかけて、西日本総番の大岩雷太とサイの目河原で、百万人もの子分を引き連れて対決することになる。
     あらしは、そのケンカを止めようとして、ゲームで総番の座を決めることを提案する。河原に張られた巨大なスクリーンに「トランキライザーガン」のゲームが映し出され、空中の巨大な凧に乗ってプレイするのだ。
     ところが、大岩雷太がゲームをしたことがないため、あらしが代打ちすることになった。空中での激闘が始まったが、途中で天候が急変し、激しい雷雨のため、上流のダムが放水を始めてしまう。
     このままでは河原にいる人間は流されてしまう。もちろんゲームも中止だ。
     番長連合の子分たちは逃げようとするが、大岩雷太がそれを止めた。
    「歴史に残る名勝負をぶちこわすな〜〜〜〜っ!!」
     雷太の一声で、百万人の子分たちがスクラムを組み、人間ダムとなって水を食い止めた(このシーンは、涙なくしては読めない感動のシーンだ――と思ったものだが、その後、本宮ひろ志氏の「男一匹ガキ大将」のパロディだと気がついた。どうやら、この回のストーリー自体が、「男一匹ガキ大将」をモチーフにしたものらしい)。
     子分たちの献身的な努力で、河原に設置されたゲームマシンとスクリーンも流されることなく、ゲーム続行が可能になったが、今度は、カミナリがゲームマシンのマイコンを狂わせて、いきなり、あらしの点数が0点になってしまったのだ。
     ピンチに陥ったあらしは、そのカミナリにヒントを得て、両手を擦り合わせて摩擦電気を発生させると、その電気をゲームマシンに向けて、カミナリのように放電させたのだ。
     この高圧放電で、ゲームマシンに内蔵されているマイコンを狂わせ、一気に高得点を叩き出して一平太に勝ってしまうのである。
     ゲームマシン内蔵のマイコンに影響を与える必殺技は、この「エレクトリックサンダー」と「炎のコマ」だけだ。かつて流行した魔球マンガでは、ボールが消えたり複雑に曲がったりする原理が、ほとんどヘリクツで固められて語られたものだが、この2つの技の原理も、その魔球の原理に近いものがある。原理はほとんどヘリクツだが、それでも、「なぜ勝つのか?」という原理が語られている必殺技は、この2つだけ。残りは、なぜできてしまうのかがよくわからない不思議な必殺技ばかりだった。
     このエレクトリックサンダーは、アーケードゲームが登場した頃、電子ライターや、圧電式ガスコンロ着火ライターで、ゲームのクレジットが増えたりしたことに、ヒントを得たものだろう。その後、このような高電圧に対する対策がとられるようになったので、実際には、使えたかどうか疑わしい。それでもできてしまうところが、マンガの必殺技の面白いところである。

★真空ハリケーン撃ち

    「ライバルに負ける〜山にこもって特訓する〜新必殺技を編み出してライバルに勝つ」という魔球マンガの王道パターンで誕生したのが「真空ハリケーン撃ち」だ。
     初登場は「死の猛特訓をたえぬけ!」の巻(第6巻P142〜)。空手の名人、山嵐大作が、あらしの名前をかたって「ゲームセンター・あらしTVゲーム道場」を開いて生徒を集めているのを知った本物のあらしは、道場に乗りこんで山嵐と対決する。
     ところがどっこい山嵐は、あらしの必殺技をすべて使うことができるのだ。しかも、炎のコマも月面宙返りもエレクトリックサンダーも、空手できたえた山嵐のほうが上ときている。
     山嵐に負けたあらしは、ゲームチャンピオンの誇りでもあるインベーダーキャップを、山嵐に奪われてしまい、ショックから、オシッコたれ流し状態のフヌケになってしまう。
     そこに登場した謎の老人が、あらしを山奥に誘拐した。この老人は、山嵐大作の空手の先生で、あらしに、不肖の弟子の山嵐を倒す方法を伝授する。
     激しい特訓の末、あらしは、心を「空」にし、「気」を体内に貯めこんで全身を回転させ、真空の渦を作り出す。その真空の渦がレバーを操作し、一気に高得点を出すのだ。
     これが、「天! 地! 人!」のかけ声で始まる「真空ハリケーン撃ち」の正体だった。
     ただし、数分間、息をとめないといけないため、鼻がつまったりしていると息が続かず、この技を使うことができないという欠点もあった。
     この技をさらに激しくしたものに「真空ハリケーン撃ち・千手(せんじゅ)返し」がある。また、「水魚のポーズ」や「月面宙返り」との組み合わせ技や、弟のとんがらしとともにダブルで真空ハリケーン撃ちを見せるシーンもあった。

★グレート・タイフーン

    「真空ハリケーン撃ち」が、さらにスケールアップされたのが、「風よ! 雲よ! 雷(いかずち)よ!」のかけ声で始まる「グレートタイフーン」だ。
     この技が登場したのは、「ドクロ大帝の挑戦」の巻(第8巻P5〜)。ゲームで世界制服をたくらむ(このコンセプトがよくわからないが)ネオ・ドクロ党の党首、ドクロ大帝との激闘の中から生まれてきた技だ。
     ドクロ大帝は、「超空間ブラックホール」という必殺技で、あらしに挑戦してきた。これもよくわからない技で、ドクロ大帝が腕をふり回すと、腕のまわりにブラックホールができ、なんでも吸いこんでしまう異次元のエネルギーでゲームのレバーを操作、高得点を上げるというものだった。
     この技の前には、あらしの「炎のコマ」や「エレクトリックサンダー」といったノーマル技は通用せず、唯一、真空ハリケーン撃ちが対抗できるのみだった。
     その激戦の最中、あらしは、一瞬のひらめきだけで、真空ハリケーン撃ちをさらにパワーアップさせる技を思いつき、大自然のパワーを呼びこんで、あらし自身が台風となってしまうのだ。
     この技は、ジェット戦闘機や原子力潜水艦を吹き飛ばすほどのパワーを持ち、さらに逆回転させることもできた。
    「真空ハリケーン撃ち」は、1950年代に大ヒットした「赤胴鈴之助」の「真空斬り」あたりにヒントを得たのではないかと思われるフシもあるが、とりあえずは、まだ、「理解できる範囲」の技だった。
     だが、この「グレートタイフーン」になると、もはや理解は不可能だった。「真空ハリケーン撃ち」同様に、空気の渦をつくり、そこで台風を発生させてしまうという「理屈」は、なんとなくわかるのだが、もはやヘリクツを通り越し、ただひたすら「なんてすごい技なんだ!」と、あきれるしかなかったのだ。
     もはや、あらしは常人の域を突破し、超人となっていたが、「グレートタイフーン」以上にスケールの大きい「超新星(スーパーノヴァ)」が、すでに登場していたため、あらしには(作者にも?)、もはや恐いものはなかったのかもしれない。
     この壮大な必殺技にも弱点はあった。真空ハリケーン撃ちと同じように、空気の渦を作るのを基本とした技のため、空気のない宇宙空間などでは使うことができないのだ。
     その弱点をついたのが、北アルプスの白魔岳山中で、あらしと対戦する氷雪之助だった。「グレートタイフーンやぶれたり」の巻(第10巻P5〜)に登場した氷雪之助は、「雪華(せっか)の舞い」という必殺技で、「グレートタイフーン」を起こしたあらしに氷の結晶を浴びせ、冷凍状態にしてしまうのだ。そして、「グレートタイフーン」が破れたことから、あらしは、新必殺技を編み出すことになる。

★レインボーバズーカ

     あらしの必殺技は多いが、特訓の末に新必殺技を編み出すという「必殺技の王道」を踏んだのは、「炎のコマ」に「真空ハリケーン撃ち」、そして、これから紹介する「レインボーバズーカ」の3つしかない。あとの必殺技は、一瞬のひらめきで生まれてしまったものがほとんどなのだ。
     そういう意味では、あらしというのは、「血と汗と涙」「友情・努力・勝利」といった熱血マンガの主人公とは正反対の、子供たちにとっては、ドラえもんにすぐに助けてもらえる「うらやましい存在」の野比のび太少年と同じような存在だったようにも思える。
     また、必殺技の特訓にしても、魔球マンガの主人公などとは異なっていた。あらしが真剣になればなるほど、必死になればなるほど、どんどんおかしさとアホくささが増してしまうのだ。それは、あらしという存在が、やはり、「正のヒーロー」ではなく、「負のヒーロー」だったせいなのだろう。
     生み出される必殺技も、魔球マンガのように、「ひょっとしたらできるかもしれない」というレベルを超越し、「こんなこと、できっこない」と、読者もわかっていながら、面白がって読むという不思議なマンガだった。ヘタをすると読者に「ばかばかしい」と投げ出されかねないストーリーであり主人公だった。いま読み返してみると、必殺技の特訓風景などは、ほとんど熱血少年マンガのパロディとしか思えない。それが、完全なギャグマンガになるわけでもなく、読者がストーリーに引き込まれていったのは、あらしのゲームに対する一途な思い込みゆえだろう。
    「ゲームのためなら命も賭ける」という一途さが、すべてを許してしまった――いや、超越してしまったのである。
     さて、必殺技の話に戻ろう。
    「グレートタイフーン」が破れたあらしは、北アルプス山中の雪の中に閉じこもって、新必殺技の特訓を積む。しかし、なかなか成果が上がらない。そんなとき、偶然、ヒントにぶち当たる。木の枝のあいだに張った氷が凸レンズになり、太陽の光を集めて、あらしのお尻を焼いたのだ。
     あらしは、自分のからだを回転させて(あらしの必殺技には、自分のからだを回転させるものが実に多い)、空気中の水分を集めてレンズを作り、太陽の光を集束して、光のパワーでゲームマシンのレバーを動かすのだ。
     このとき発生する熱で、氷雪之助の必殺技「雪華の舞い」も敗れ去ることになる。
    「レインボーバズーカ」は、太陽が出ていないと使えない技だ。だが、雲が出ているときは、その雲を「グレートタイフーン」で吹き飛ばして、太陽が見えるようにしてしまうのだ。
     しかし、この豪華な必殺技にも、太陽が出ていない夜間や、昼間でも屋内や洞窟の中などでは使えないという弱点がある。ところが、そんなときには、弟のとんがらしが、全身で「炎のコマ」状態を作り出し、人工太陽となって、あらしの「レインボーバズーカ」のエネルギー源となるのだ(「赤ん坊帝国」の巻。第12巻P89〜)。この「壮大なるご都合主義」こそが、あらしの人気の秘密だったのかもしれない。

★超新星(スーパーノヴァ)のエネルギーは宇宙から?

    「ゲーセンあらし」に登場する必殺技も、スタート当初は、「月面宙返り」「炎のコマ」のような、いまにして思えば小技の必殺技が中心だった。ところが、初の増刊号一挙100ページ読み切りで、早くも、とんでもない必殺技が登場する。
     それが、「エレクトリックサンダー」よりも早く登場した初の大技「超新星――スーパーノヴァ」だ。
    「決定! TVゲーム世界チャンピオン」の巻(第3巻P5〜)で、最後のクライマックスで出現した技だが、その直前の「恐怖!! 夜霧の吸血鬼」(第4巻P57〜)で突然生まれた「十字架撃ち(クロスアタック)に、ジェット戦闘機F15イーグル並みのスピードを加えたら、あっというまにできてしまった技だ。
     対戦したゲームは、通信衛星が宇宙空間に映しだすギャラクシアン。「超新星(スーパーノヴァ)」は、その通信衛星をも、一撃で破壊してしまう超必殺技だ。
     あらしの全身が光っただけで、宇宙にまで影響の及んでしまうのだが、なぜ、そんなにも凄まじい大技ができてしまうのかは、さっぱりわからない。どうも、地球や宇宙のエネルギーを全身に集め、それを一気に放射する技ようだ。この「超エネルギー」は、中国4千年の歴史の中で培われてきた「気功」で有名な「気」のエネルギーのようなものかもしれない。
    「超新星(スーパーノヴァ)」は、さすがに消費するエネルギーも大きいのか、やがて、「ドクロ大帝・死の銀河決戦」の巻(第13巻P5〜)では、ついに、この技を使ったあらしが力尽きて倒れてしまうシーンが出てくる。
     このまま死んでしまうかと思われたのだが、さすがはスーパーヒーロー、インベーダーキャップに、大地と海と大空のエネルギーが吸いこまれていく。あらしは、ヨロヨロと立ち上がり、巨大出っ歯でゲームマシンのボタンを直撃し、ついにドクロ大帝を打ち破ることに成功した。
     この物語は、銀河の滅亡を賭けてドクロ大帝と戦うというもの。ただのストリート・ゲーマーだったあらしは、すでに地球滅亡の危機を何度も救う救世主になっていたが、その中でもスケールの大きさでは最大級の巻だった。
     対戦の舞台が、ゲームセンター、学校、街といった身近な場所から、宇宙空間や異次元、過去や未来といったスケールの大きなものに変わっていったのも、「超新星(スーパーノヴァ)」のような、あらしを超人にしてしまう必殺技の登場と関係がありそうだ。必殺技が大げさになるにつれて、ストーリーもどんどんSF的に肥大化していくことになった。街のヒーローが、地球的な英雄になったとき、すでに、あらしがいる場所は、地球にはなくなっていたといえるのかもしれない。
    「超新星(スーパーノヴァ)」は、あらしの生命をもおびやかす最終兵器だったはずなのに、何度も(計4回)使っている。あらしのタフさには驚くほかない。

★最終兵器スーパーノヴァ・トリニティ

     最終回の「さらば!! あらし 永遠のゲーム戦士よ!」の巻(第17巻P124〜)に登場し、正真正銘のあらしの最終兵器になったのが、この「スーパーノヴァ・トリニティ」だ。
     恐竜の化石発掘現場でゲームの化石が発掘される。このゲームの化石が、あらしのインベーダーキャップに呼びかけ、あらしは、さとる、一平太とともに化石発掘現場に向かった。
     だが、あらしたちは、ゲームに吸いこまれ、恐竜の世界、ジュラ紀にトリップしてしまう。そこで出会ったのは、タイムマシンに乗って、人類の祖先に知恵と力を与えるインベーダーキャップを届けにきた未来人たちだった。なんと、歴史上の英雄は、すべて、インベーダーキャップを持っていたというのだ。
     ところが、未来人たちの乗ったタイムマシンが、故障でジュラ紀に不時着。未来人は、インベーダーキャップを持つあらしに助けを求めるために、化石を使ってSOSを発信したのだった。インベーダーキャップがあれば、タイムマシンを動かすことができるのだという。
     ゲーム&ウォッチの形をしたタイムマシンの中で説明を聞いたあらしは、インベーダーキャップを差し出すが、肝心のインベーダーマークが消えていた。恐竜との戦いの途中で落っことし、それがティラノザウルスのおでこに貼りついてしまったのだ。
     インベーダーマークがおでこに貼りついたティラノザウルスは、知能が飛躍的にアップ。人間の言葉もしゃべり、火も扱って、他の恐竜たちとともに、あらしたちを攻撃してきた。
     このまま恐竜が地球の支配者になったら、地球の歴史が変わってしまう。あらしと知能を持ったティラノザウルスは、タイムマシンのボディに映し出されたスペースインベーダーで戦うことになる。だが、インベーダーマークのパワーを身につけたティラノザウルスの前で、あらしはコテンパンになってしまう。インベーダーマークのないインベーダーキャップは、ただの帽子でしかないからだ。
     その危機を救ったのが、さとると一平太だった。ふたりは水魚のポーズで精神を統一し、あらしと一体化する。その3人の精神が合体して生まれたパワーが、本当の最終兵器「スーパーノヴァ・トリニティ」を生み出したのだ。
     この最終必殺技で、ティラノザウルスは、おでこのインベーダーマークが砕けてしまい、そのパワーを失なってしまう。そして、あらしたちも、友情のパワーが、インベーダー・パワーに優ることを知ったのだった。
     そして、あらし、さとる、一平太の3人は、ゲーム&ウォッチ型のタイムマシンに乗り、宇宙に、信の平和と友情を伝える伝導師として旅立っていくのである。
     スーパーノヴァ・トリニティの「トリニティ」とは、三位一体の意味だ。3人の友情パワーが、それまで頼っていたインベーダーパワーに打ち勝つという哲学的かつ衝撃的な最終回だった。
     これは、作者が、それまでの、あらしの存在を否定することにもなるのではなかろうか?
     作者が、「ゲーセンあらし」に潔く訣別するための最終必殺技だったようにも思えてならないのである。

★珍必殺技・水魚のポーズ

    「ゲーセンあらし」では、激しい動きの必殺技がほとんどだったが、その中で異色の存在だったのが「水魚のポーズ」だ。
     この技が登場したのは、「炎のコマ」や「エレクトリックサンダー」よりも早い「ビッグ・コンピューターをやっつけろ!」の巻(第1巻P69〜)においてだった。
     コンピューター開発センターの巨大コンピューターで動く立体ゲーム「海賊インベーダー・パイレーツ」との戦いで、あらしは、突如として出現する「スペースゴースト」の動きがさっぱり読めず、開き直って床に寝転んでしまうのだ。
     そのとき、疲れをとるために、腹這いの状態から、両手を後ろにのばして、両足をつかむポーズをとる。これがなんと都合のいいことに、偶然にも、ヨガの訓練の中にある「水魚のポーズ」だったのだ。
     そのおかげで、精神統一ができ、ヨガではチャクラと呼ばれる心眼により、ゲームの画面が止まったように見えるだけでなく、まだ画面に出ていない敵キャラの動きさえも先読みできるようになってしまうのだ。
     この「水魚のポーズ」は、実際に、ヨガのトレーニングの中にあるらしい。そこからヒントを得て作られた必殺技だろう。「水魚のポーズ」を裏返すと、便秘を直すポーズになり、いつも快便のあらしが、下痢を起こしてしまうという弱点も披露されるが(「助けて! 運動会がこわいよ〜っ!」の巻。第4巻P119)、プロレスのブリッジのようなこのポーズは、ヨガでは、便秘を直すポーズだというのも本当らしい。作者は、ヨガの本などを、だいぶ研究したようだ。

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