モバイルコラム

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元祖!
モバイル3兄弟
(99/07/14)

 最近、モバイルが世間でデカイ顔をしてのさばっているが、元祖モバイル機といえば、やはり「Tandy TRS-80 Model 100」(通称Tandy 100)だろう。1983年頃にアメリカのタンディ・ラジオ・シャック社から発売された8ビット・パソコンで、設計は当時マイクロソフト副社長だったアスキーの西和彦氏。京セラのOEM製品だ。
 簡易ワープロ、表計算ソフトのマルチプラン、BASIC、通信ソフト、モデムが内蔵され、これ1台で出張が間に合うスグレモノ。単3乾電池4本を入れてスイッチをオンすれば、すぐに使える簡単さが受け、とくに新聞記者に愛用者が多かった。画面サイズは40字(半角)×11行ほどだったが、後継機のTandy 200は折り畳み式になり、画面サイズも大きくなった。
 1980年代中盤になって東芝がT-1000シリーズというDOSで動く16ビットのノートパソコンを発売したおかげで、Tandy 200は製造中止が決定された。これでパニックになったのがDOSコマンドを知らない欧米の新聞記者たち。いま持っているTandy 200が壊れたときに備えて予備機を買い占める人たちが急増し、プレミアがつくほどの騒ぎになった。どこから聞き込んだのか、Tandy 100、200を所有する僕のところにまで、アメリカの新聞記者から「売ってくれ」というメールが舞い込んだりもしたほどだ。
 日本で発売されたNECのPC-8201は、Tandy 100からモデムとマルチプランを取り除き、かわりにカタカナフォントを載せたもの。もちろんこれも京セラのOEMだ。発売が1984年頃で、パソコン通信も日本には存在しなかった頃だから、モデムが省かれたのもしかたないだろう。
 ぼくが最初に買ったモバイル機もPC-8201だった。富士スピードウェイや鈴鹿サーキットから、音響カプラーを使ってアスキーネットやCompuServeにレース速報を送ったものである。さらに中古でTandy 200を買い、海外から来日するレーサーやミュージシャンに、日本滞在中の通信用モバイル機として貸し出していた。画像のTandy 100は、1997年にF1カメラマンとして高名な間瀬明さんからいただいたもの。これら「元祖モバイル3兄弟」にも、最近、骨董的価値が出てきたらしく、「週刊アスキー」などの雑誌で懐古パソコン特集があるたびに、写真撮影用に貸し出されている。(END)

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