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『仮面ライダー青春譜』第4章 アシスタントから編集者へ(2)

●最初の仕事は怪奇マンガ

 いよいよ仕事がはじまった。
 最初の仕事は怪奇マンガだった。当時、楳図かずお氏が巻き起こした少女向け怪奇マンガがブームになっていた。楳図氏は、すでに少年誌に移行していたが、古賀新一などの手で、あいかわらず少女怪奇マンガの量産はつづいていた。その少女怪奇マンガを、江波先生も連載することになったのだ。
 掲載誌は講談社の「少女フレンド」。恋人に裏切られ、殺された女性の長い髪が、死体から離れ、恋人に復讐するストーリーだった(と思う)。
 江波先生は、わら半紙にネームを入れていた。そのネームを原稿用紙に写していくのだが、ぼくに最初に割り当てられた仕事は、その原稿用紙づくりだった。
 劇画家の多くは、ペンタッチを活かすために、ペン先の引っかかりやすい画用紙を好んで使っていた。江波先生のところも同じで、薄手の画用紙を原稿用紙に使っていた。

 マンガの原稿用紙は、模造紙や画用紙の上に基準となる型紙を重ねて載せ、千枚通しなどで穴を開けたものを使うのが一般的だった。
 定規を使って穴と穴を鉛筆で結び、枠線の基準となる線を引いたものが原稿用紙になるのだが、江波先生のところでは、もっと合理的な方法が使われていた。厚紙の内側をカッターで切り抜いた型紙があり、この内側を鉛筆でなぞるだけで、基準の枠線が引けてしまうのだ。
 この型紙を使った原稿用紙づくりが、ぼくの最初の仕事だった。
 この原稿用紙に、先生がネームを写し取っていく。もちろんコマ割りしながらだ。ネームは、二つ折りにしたワラ半紙に書かれていた。
 ぼくはネームとコマ割りが入った原稿用紙を受け取ると、まずカラス口で枠線を引いていく。枠線が乾いた原稿用紙に、先生が人物の下絵、ペン入れをしていく手順になっていた。
 この時点でアシスタントは、ぼくひとりだけ。人物のペン入れが終わった原稿用紙に背景を描いていくのだが、情けないくらいに絵が描けない。ガチガチに緊張していたからだ。
 それでも数日が過ぎると、少しづつ要領も覚えてきた。次第に背景をまかされるところが増えていき、仕事に通うのが楽しくなっていった。


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コメント

毎回、楽しく読んでいます。本になるといいですね。
石ノ森章太郎萬画大全集の情報が知りたいのですが、すがやさん、ご存じではないですか。
セット予約販売という話もあり、手がでないなーと思っています。


>misatarouさん

 コメントをありがとうございました。

『石ノ森章太郎萬画大全集』については、こちらはまるでわかりません。

 確か、角川書店から出るんですよね?



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